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百姓百品の便り
種の多様性って大事!!在来種フォーラムにて
在来種フォーラムに参加してきました。
会場は、立ち見のでるほどの参加者でした。以下、報告を混じえた感想です。
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近代農業の進展により、数少ない特定の改良種が広く普及し、地域の環境に適応した在来品種は急速に失われてきました。例えば、明治時代のお米は日本全国で4000品種。それに較べて、現代はコシヒカリ、あきたこまち、ひとめぼれの3品種で60%を占めると言われています。つまり3990品種強の遺伝子が消失したかもしれないのです。
その消失したかもしれない多様な種を守っている可能性のあるのが百姓。出会った品種に惚れ込み、自家採種を続けているかもしれません。
そして、それがその地方の食文化と出会ったとき、伝統野菜としてスポットライトをあびることになるのでしょう。おもてなし野菜としての京野菜や江戸野菜、熊本の肥後野菜達のように。では、遺伝子は多様でなければならないのでしょうか?改良された美味しいお米だけが生き残って、何がいけないのでしょう?その理由がこのフォーラムで分かった気がします。
遺伝子が多様でなかったために起こった歴史に残る悲劇が紹介されました。1800年代、アイルランドで主食として栽培されていたジャガイモの壊滅的被害による飢餓とアメリカ大陸への大移動です。当時のアイルランドでは収量の多いジャガイモに偏って栽培され、遺伝的多様性がほとんどなかったため、菌の感染に耐え得るジャガイモがなく、壊滅的に病気が広がったと言われます。ジャガイモが主食作物であった原産地のアンデス地方では、ひとつの畑にいくつもの品種を混ぜて栽培する習慣が伝統的に存在し、これが特定の病原菌の蔓延による飢饉を防いでいるようです。
多様である事が非常に重要という話は、多様な畑を作って病害虫の被害を最小限にするという有機農業の技に通じる点があり、納得でした。植物学者ヴァヴィロフの「栽培品種の多様性、変異が最も大きい地域がその作物の起源地である」という「栽培植物起源論」も紹介されました。例えば、トウモロコシの品種がもっとも多いのは中南米。大豆は中国。稲はインド。日本は、そこで言われる八つの起源からはずれていて、もともと多様性の少ない国なのに、日本の気候風土に適した多様な品種ができても、保存されていないのが現状のようです。
例えば、日本で多様な品種が出来たのが大根。練馬大根、五木大根、糸巻き大根、三浦大根、桜島大根・・・地方に一つはあったはずで、最近はF1種の青首大根に取って代わられていますよね。自然の種は絶滅といい、人間の手の加わった栽培品種は消滅というそうです。栽培品種は作らなくなったらすぐに消滅するので、絶滅より消滅の方がスピードが早いとも話されました。
その消滅の危機にある在来種の調査研究、保全と普及を目的とした在来種研究会が今回のフォーラムで設立されました。今後の展開を心から期待します!
それから、私達は自分が作った農作物の種を採り、それを数年続けて性格が固定したものを、固定種として表現しています。どうも、これが在来種の起源のようです。個々の農家の作った固定種が、広く地域に受け入れられ、食文化となったとき、在来種と表現されるんだなーと、私は理解しました。種採りを頑張ります!
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土素人が農業を始めた新規就農の道
熊本県の農業雑誌に連載でエッセイを書いています。
現在の連載は「土素人が農業を始めた新規就農の道」というタイトルで書いています。ちょと恥ずかしいのですが、2月号に書いた記事を紹介しますね。
私達が農業を始めた頃はプチ農業志向の時代で、私の周りでも何人かが田舎に入りました。30数年前と今では、状況は違っていると思いますが、昔の話の方が村とのすれ違いが分かりそうなので、紹介します。
奄美に入った友人の話です。受け入れてくれる人がいて、古い家を借りる事ができました。ところが、数年後に村を出て行くことになったんです。
もともと村の人は、よその人には親切です。古い家の風呂を改修するのに必要だろうからと、「入会地の木を切っていいよ」と言ってくれたのでした。だから、喜んで自分たちで木を切ったそうです。これが一つ目の大きなタブー。都会から来た彼女達は、木の種類も、切る順番も知りません。だから、村の人からみれば「なんでその木を切るの?と」いう木を切ってしまったのでした。
新しい生活に夢あふれ、鶏を飼いたいと、庭に小さな鶏舎を作り、ひよこを入れました。これが二つ目のタブー。ハブのでる奄美では、屋敷内でひよこは飼ってはいけなかったのです。村を出る事になる前に、トラブルは回避できなかったのでしょうか。実は、村の人は、都会人が何も知らないということを知りません。だから説明の必要があると思わないらしいのです。もしかして、木を切る順は説明したのかもしれませんが、田舎に入ったばかりの都会人は方言が分かりません。彼らがニコニコと黙って聞いている時は、聞き取れなかったと思った方がいいくらいです。それに、村の人ははっきり物を言わないのに加えて、会話の中に代名詞が多い。小さい時から、いや、何代も前から共有している村の生活からくるアウンの呼吸なんでしょう。「昨日たい、あそこの人が、そうばさしたったい」。という会話で、昨日何かがあったことは了解!で次。「あそこの人って誰?」「そうばさしたって何?」と頭にリフレインして、何も聞き取れないで終了!となります。
この話で、新規就農者とつきあうのは面倒と思わないでください。大きなタブーはともかく、小さなタブーは気長に教えて、つきあってください。村の風習、文化を教えてもらうのはとても嬉しいのですから。私達は現在受け入れ農家側なのですが、トラブルやすれ違いの経験値が、受け入れの底力になると信じています。
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寒波ショック
・・・・・水道管は破裂しまくり・・・・・・
1月23日から25日にかけて、雪と寒波の影響で、我が家の作業場周りや、鶏小屋、苗床関連の水道はまるまる2日間以上凍ったままでした。その間は、氷がふさいでいるので、割れた水道管の場所は分からないのですが、氷が溶けると破裂して破けたところから水が噴き出します。溶けていく順序に従って、合計4箇所の修理に追われることになりました。一番ひどいところは何と蛇口の金属部分そのものが割れてしまっていました。うちだけでなく、県下至る所で、断水が続き、寒さに慣れていない南国では異例の事態でした。
・・・・・・ブロッコリー全滅 ジャガイモも・・・・・・
そんな寒波だったので。もちろん畑にも影響は出ています。第二弾のブロッコリーは、小ぶりながら出始めたばかりなのですが、ほぼ全滅です。白菜、キャベツ、大根などは畑でも、納屋保存のものでも凍って、ストーブで暖めて解凍しながら出しました。一番驚いたのは、収穫して、保存してあったジャガイモの水分が凍ってしまって、凍傷で痛んでしまったことです。今まで、掘り遅れたジャガイモが一部土の中で凍って傷むことは経験してますが、掘り上げた後保存してた物が納屋で凍って傷んだというのは初めてのことです。
以前NHKスペシャルで、ジャガイモの原産地アンデスの高知では、一部のものをわざと凍らせた後、踏みつぶして、それを乾燥させた粉状の物を保存食として使うというのを見たことがありますが・・・。
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総会&新年会
23日は、百草園の研修卒業生等のための出荷組織「万菜村」の総会&新年会でした。
一品持ち寄りの新年会には、近くで就農した若者も来てくれて、大人19名、子供6名の賑やかな新年会になりました。
子ども達は、大人がお酒を飲んでいる横で、トランプやオセロ、将棋で遊んでいて、一人で携帯でゲームをしている子はいません。今時、きっと珍しい光景なんですよね。昨年はすこし出荷が落ちましたので、みんなで出荷先を探して頑張ります。
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1年間ありがとうございました
2015年も終わろうとしています。今年も一年間百草園を支えていただきありがとうございました。近頃は特に天候では、平穏な年という物がなく、作り手には何かと苦労が絶えません。今年は、春の長雨、夏の台風、秋の異常高温と何でもありの一年でした。おかげで、畑の作がらとしては不本意な一年でした。それでも、この寒さの到来とともに、雑草も、害虫も一段落し、春までは植え付けもお休みになるので、ちょっとだけ、気分に余裕が出てきます。忙しすぎて、まだ残っていた台風のあと片付け、ハウスの補修や、家の補修に取りかかれそうです。
来年はどんな年になるかなと、期待を込めながら、この最後のお便りを書いているところに、近所の生産者仲間が訪れ手きました。私より10歳くらい若い農家ですが、年寄りの身体も聞かなくなって、今までどおりの広さをこなせなくなったので、うちの周りの3枚,4単ほどの田んぼを引き受けてくれないかというのです。確かにハウス物のスイカ等に集約した方が、大して金にもならない、開田(ポンプアップ)の米作りを続けても、経費と、手間を食うばかりで大変というのは分からないでもありません。でも。我が集落でいえば50代半ばとはいえ、若手の一人ですから寂しいのも事実です。
私達が借りれば、我が家の周りの小型ヘリでの航空防除の面積が減ることになるので、万菜村のメンバーと協力して引き受けることにしようと思います。先週も書きましたが、担い手の育成は待った無しの急務です。百草園が地域で頼られる度合いもまだまだ増えていきそうです。そうした要望に少しでも応え続けていけるのも、一緒に歩き支えてくれる、消費者の皆さんがいるからこそです。
来年も、頑張ろう!
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今年も餅つきやったよ!
今年の餅つきは、熊本県産牛の赤身肉(NON-GMO牛)使ったお店ママトコキッチンのイベントの中でやることに。ママトコキッチンからも人を出してくれて、大人数での餅つきと、餅丸めとなりました。「なんとなく勝っ手がちがうなー」と戸惑いながらも、2時前には十臼をつききりました!
子ども達もぺったんぺったんと餅つき体験で楽しそうです。
ママトコキッチンでは、私達の野菜も使ってくれています。
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農業センサス調査結果<農業人口激減>
農業人口の減少についてつい先日新聞報道がありました。5年ごとに行われている農業の国勢調査と言われている農業センサス調査2015年版(私も今回は村の自治会役員で調査を担当しました)の結果です。農業従事者は5年前から51万人減って現在、209万人になったそうです。つまり約260万のうち51万が減って210万人以下になったと言うことになります。例えば1000万人のうち50万が減ったと言うレベルの話ではないのです。
このまま歯止めがかからないとすれば、どんなことになるか。想像力を働かせれば「マジ、これはヤバイんじゃ!」と誰でも思うのではないでしょうか。「GDPの3パーセントしか生み出さない農業なんか無くったっていい。食糧は工業で稼いだ金で輸入できる」と言った。経団連幹部もいました。TPPで自由競争原理一辺倒の世界に農業も巻き込まれていった時、どうなるのか。これもあわせて考えなければなりません。自由競争原理というとあたかも普遍的価値のように聞こえますが、結局のところ価格競争に勝つところが全てを制すと言うことに他なりません。葉物などの野菜類はともかく、穀物類、同じく大量の穀物使用を基礎とする畜産物などは太刀打ちできずに衰退する羽目になりそうです。そうなると、日本の農業の全体的なバランスも狂ってくることになります。いったいどんな結末になるのか、誰も想像できないといのが正直なところです。
そんな中、東京の新農業人フェアに行ってきました。農業に就職や新規就農で参入しようとする人向けの、大面接会です。熊有研でやっている「有機農業者養成塾」の来年4月スタートする人の募集のために、ブースを出して一日面接してきました。全体では千人以上の来場者がありましたが、この人達全部が農業従事者になってもまだまだ足りないペースだなと思いながら座っていました。
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今年も熊大医学部生と命をいただきました
今年も、熊本大学医学部で予防医学を学ぶ学生さんが、上田先生と魏先生に伴われて百草園に来ました。今年で何回目でしょうか?
畑の見学をした後は恒例の鶏の解体。その後、炭火で焼いて、命をいただきます。今年の学生さんはとても丁寧です!
熊本の有機農業は。40数年前、地域医療や予防医学を学ぶ医学部生の農村の調査から始まったとも言えます。その火をともし続けたいですね。
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ビストロ・シェ・ル・コパンさんで百草園の野菜が素敵に
こんにちは。熊本県山鹿市のフランス料理店、ビストロ・シェ・ル・コパンのマネージャー、田中です。
フランス料理というと、お肉ばかりというイメージがあるかもしれませんが、うちではお野菜もたっぷりお出ししています。とくに百草園さんのお野菜は、味が濃くておいしいと、お客さまにはいつも喜んでいただいています。
たとえば前菜では、サトイモのテリーヌ。百草園さんのサトイモを自家燻製をかけ、自家製ベーコンをまいてテリーヌにしています。ホウレンソウやシイタケはキッシュにしてお出しします。冬瓜は、サンマのコンフィと合わせてグラタンにしています。カブやカボチャはポタージュにすると、野菜の甘みが生きたスープになります。メインディッシュのつけ合わせには、季節の野菜を焼いたり湯がいたりして添えています。とくに、ヤーコン、ビーツ、水前寺菜などちょっと珍しい野菜をお出しすると、お客さまは「これは何ですか?」と興味津々。とても喜んでくださいます。今年はカボチャをプリンにしてデザートでご提供していますが、そちらも好評です。
なお、つるむらさきは、まかないのパスタとして食べるのがスタッフの間(といっても、シェフとわたしだけですが)のブームに。つるむらさきとツナ缶をニンニクとトウガラシで炒めたところに、茹でたパスタを投入するだけです。とてもおいしいのでぜひお試しください。
マネージャー:田中裕子
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県の農業冊子「アグリ」に連載
実は、県の農業冊子「アグリ」に連載で書かせて頂いていました。来月で1クールが終わります。
「農業女子から見た農業経営」というタイトルをつけて、これまで書いた事のないジャンルで挑戦しました。
遅まきながら、9月号の記事を紹介します。*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
5回目で、私とつれあいは小規模企業共済の共同経営契約書を結んだことを書きましたが、農業の場合は家族経営協定の方が普通でしょうね。農業経営の目標や役割分担、収益の配分、休日等の生活のことも含め、家族みんなで話し合い、協定の中身を自分たちで決め、文書化するものだそうです。
新規就農者の私は、その中身をあまり知らず、「いいよ〜」と勧めてくれる人もなく、それを結びませんでした。でも最近、どれのくらいの人たちが家族経営協定を結んでいるのか知りたくなって、調べてみたところ、平成22年の熊本県の農家総数66,896戸の内、家族協定を結んでいる農家は2,929戸で、4.7%なんだそうです(平成24年には240戸増えています)
「そんな事をお父さんと話し合うなんて、難しいよ〜」とか、「話しはできるけんよか」とか、「配分するほど、もうけとらん」とか、「財布は私が握っとるけん」なんて声が聞こえてきそうな数字です。それならそれでいいのですが。。。
私の若い頃、1985年に男女雇用機会均等法ができました。当時は賛否両論というより、女性からも男性からも、反対意見の方が多かったように覚えています。でも、この法案を作った当時の労働省婦人少年局の赤松良子さんは、「法律を改変するのは作るよりたやすい、小さく産んで大きく育てよう」と信じて、なんとか法案を通したそうです。そしてその言葉の通り、30年の間に何度か改変され、まだ道の途中でしょう。
すこし話が大きくなりすぎましたが、私の、経営協定を結んだという小さな経験からしても、決まり事はあった方がいいと思います。家族経営協定でもいいし、なんでもいいから、とにかを生み出してみませせんか。自分の時は給料や農業者年金しか決める事が出来なくても、決まった時は心の中では飛び上がるほどに嬉しいはずです。その後、現実はほとんど変わらないことに、少しがっかりするかもしれませんが、それでもいいではないですか。そのバトンを次の世代に渡しましょうよ。新しい農業女子として、次のステップを歩んでくれることを信じて。
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