農業コンクールでもう一つ驚いたのは、私達のような小規模農家が選ばれたということである。国は「企業参入による大規模化と効率化」を進める姿勢を強めているので、夫婦で営む家族農業が評価されるなど思ってもいなかった。
しかし、国連は2014年を「国際家族農業年」と定めたそうだ。家族農業が実は飢餓対策に有効なだけでなく、自然の多様性と農村文化を維持する力があると再評価しているらしい。
百草園では、私達自身が新規就農者だったこともあり、就農希望者を研修生として受け入れている。これまで、短期研修も含めると60人以上の若者を受け入れただろうか。その内の数人は百草園の周りで有機農業を始めているが、誰もが小規模農家である。しかし、彼らによって周辺の約10町歩が耕作され、周りには耕作放棄地がほとんどない。彼らは土手の草を刈り、水路を維持する地域の共同作業に参加し、農村と景観の維持にも役立っている。
百草園では、在来種と言われる、昔ながらの種を自家採種し消費者に届けているが、これもまた、小規模農家だからできる種の多様性の保存だろう。少し赤みが残り、表面に糸が巻いたような筋の入る「糸巻き大根」などの多様な在来種を作るのはとても楽しい。種を採るためには花を咲かせなければならないが、その花も大根の種類によっては薄いピンクが混じるなど、少しずつ違う表情を見せることを街の人は知っているかな。