実は、熊本県の農業冊子「月刊農業くまもと『アグリ』」に連載をさせていただいて3年になります。
自分の文章が書いている事をなかなか人に言えなかったのですが、編集の仕事をしている娘が編集者の立場でツイートしているのを読んでいて、私の文章を書かせてくれている編集者のためにも、宣伝というか、広く伝えた方がいいと思えるようになりました、
3年目にしてこの感覚、遅すぎますよね。
編集してくださっている県の農業技術課内にある熊本県農業改良普及事業協議会の編集担当さんへの感謝の気持ちをこめて、今回書いた記事を紹介します。
私、伊藤若冲が好きなんですけど、伊藤若冲の絵から見た有機農業的なことを書いています。
アグリは、県や地域振興局で見る事ができますので、県庁等に寄られた時はご覧下さい。
facebookもあります。
以下若冲の事を書いた原稿です。
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伊藤若冲の絵の中に昆虫と虫喰い跡が
江戸時代の奇才の画家と言われる伊藤若冲の人気が止まりません。今も熊本県立美術館で若冲の本物の絵が公開中です。
私も若冲の絵が好きで、画集を2冊も買い、日々眺めて喜んでいます。
上手く表現できないのですが、若冲の描く雄鶏の真っ赤なトサカと、どこかいってしまっているかのような見開いた目に釘付けです。
でも若冲にはニワトリの絵だけではなく、昆虫や植物を描いた絵もたくさんあるんですよ。
今、熊本に来ているのは糸瓜群虫図と呼ばれるヘチマを描いたものです。一見地味な絵なんですが、1枚の絵の中に、ヘチマとそこに生きる昆虫が10匹も描かれています。その昆虫は精密画のように、肉眼では見えない足のとげまで描き込まれていて、凄いのです。葉っぱをかじってる青虫もいるし、青虫の天敵のカマキリもカマを振り上げる姿で描かれています。昆虫達の目もニワトリの目と同じく見開いた目で、目だけは漫画だなーと思いますが。。。。
この絵で私を喜ばせたのは、葉の虫喰い跡と変色がしっかり描き込まれている事なんです。調べたら糸瓜群虫図だけでなく、若冲の絵にでてくる植物には、自然界に見られる虫喰いや変色、奇妙な形をした花びらまで描きこまれているようです。私も画集を隅々まで探して、インゲン豆はもちろん、牡丹も百合も紫陽花も、針葉樹ではない葉っぱには虫喰い跡が描かれてることを発見!
私は、これが有機農業の世界と似ている気がして、嬉しくてしかたありません。化学農薬のなかった江戸時代にはこれが普通ってことは、考えれば当たり前のことですよね。その普通の虫喰い跡を、美と感じて表現できる若冲の世界がうらやましいです。
農業は絵ではない、農家は食っていかないといけないから、消費者が望まない虫喰い跡はない方がいいということも分かっています。でも農業も自然本来の姿に向き合うことも必要ではないでしょうか。
百草園は卵をとるために平飼いでニワトリも飼っていて、有精卵になるように雄鶏も入れています。でもその雄鶏は改良された品種なのか、若冲の描く雄鶏のあの美しさと、どこかにいってしまっているような見開いた目はありません。養鶏用のニワトリではない、昔庭先にいた野生の血が入ったニワトリを見たいなと思う今日この頃です。