熊本県の農業冊子「あぐり」にエッセイを掲載しているのですが、12月号に載ったものです。
「アグリ」読んでくださいね。
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種苗法改正と種採りの不安
最近は、種子法や種苗法等、タネにまつわる法律が変えられつつありますが、それらを何度読んでも分からないのは、私達がやっている自家採種がどうなるかということです。農林水産省に聞くと「自家採種が全部禁止されることはありません」としかいいません。それでも何か不安です。
というのも、私達が農業を始めた数十年前は、地域のタネが普通にタネ屋さんで売られていたのに、瞬く間に大きな種苗会社で作られるF1のタネに置き換わり、地域の在来種が市場に出回る事がなくなった事を体験しているからです。何故なくなったのか。在来種が美味しくないからか?作りにくいからなのか?そうではないでしょう。
私の今のお気に入りの在来種は「赤毛瓜」。主に沖縄で栽培されているキュウリの一種です。見かけは半径10センチほどの毛だらけの茶色っぽい瓜。私達は美味しいキュウリのイメージ操作をされていますから、その姿形と違いすぎて、これをもらったときは、正直引きました。それでも、しぶしぶ皮をむいて半切りにすると、中から翡翠のような色をした瑞々しいタネがたくさん出てきます。それをスプーンでこさぎとり、薄切りしてサラダにしたんですが、味が濃くて美味しかったこと!
つる性の黒ササゲもいい品種です。生命力が強くて、タネは播かなくても、翌年こぼれタネから芽がでてきます。それを移しかえれば良いのです。あまりの生命力の強さに、百草園ではこぼれタネのササゲを、夏の緑のカーテンに採用しています。
この2つだけをみても、在来種が廃れたのは美味しくないとか、作りにくいとかいう理由ではないと断言できます。どうも、規格が揃わないと市場にでにくいということがその理由のようです。
「何故、今の大量消費の時代に、規格が揃わない品種を種採りをしてまで作るの?」って聞かれたとして、こんな事考えました。
もともと、農業って命と向き合う仕事ですよね。タネを播いて育て、タネを採り、次の命につないでいく。子育てと一緒です。子育てしていると、規格なんて関係なく、どんな子でも認めちゃうでしょう。
「種苗法で自家採種は禁止しません」と言われても、食生活を変える操作だけで、タネまで市場から一掃できたことを経験してますから、そのダメ押しで種苗法の改正があるのではないかと不安なのです。このことで儲けるのは、命の操作をした種苗会社??